
開催日:2026年4月11日(土)10:30~12:00
会場:展示ホールE内 特設ステージ
登壇者:中村 拓郎 氏/ 津谷 晃司 氏/溝口 直輝 氏
MC:荒戸 完(ZIP-FMナビゲーター)
第5回名古屋モーターサイクルショーで開催された高校生ものづくり講座。
日本を代表する3メーカーの開発者に、バイクの開発プロセスや現場でのやりがいなどを聞いてみました。

<各登壇者のプロフィール紹介の後、高校生ものづくり講座が開始された>
――バイクの開発には企画から製造まで様々なプロセスがあると思います。その流れを教えてください。
中村(ホンダ):ホンダでは「販売・製造・研究開発」という3本柱で開発を進めています。企画については、そもそもなぜそのバイクをつくらなければいけないのか、誰に届けるのか、何が魅力になるのか、いくらなら買ってもらえるのか。企業である以上、どれぐらい利益を出さなきゃいけないのかということも含めて「企画5原則」に基づいて考えます。
どういう商品をつくるかを議論して、開発上の課題を抽出したら、エンジンや車体を新しくつくるのか、今ある商品をグレードアップするだけでいくのか。そういったところを固めて実際の開発に入っていきます。開発体制としては、私のような開発総責任者のもとに、販売・生産・研究開発・購買・品質管理・認証など多岐にわたるスペシャリストが集まり、それぞれが関わりながら1台のバイクをつくり上げていきます。
津谷(ヤマハ):企画で「こういうものをつくります」という方針が決まったら、今度は設計の部署が実際に落とし込んでいきます。まず計算やシミュレーション、レイアウトの検討から始まって、設計図を書いたら形にしていきます。設計図を書いて、それをいろんな人たちがつくってくれて、実際にバイクとして組み上がって走る、というだけでまず感動するんですよね。ただ、そこからが苦しいところでもあって。
試作車を使って性能・機能を評価していきますが、うまくいくことばかりではなくて、壊れたりうまく動かなかったりということが多々あります。設計というのは性能・機能・コスト・つくりやすさ、いろんなことのバランスを取り続ける仕事なんです。何度も試行錯誤を繰り返しますが、最後には必ず直します。なぜなら直るまでやるから(笑)。

<開発時の苦労話などを織り混ぜながら講座は進みます>
溝口(スズキ):設計が固まったら今度は製造です。炎と共に熱く焼けた鉄の塊が出てくる鋳造から始まり、クランクシャフトのジャーナルをミクロン単位の精度でピカピカになるまで削り出す機械加工、ロボットが8〜9割を担うフレームの溶接と塗装、そして樹脂成形と本当に様々な工程がある。それらの部品がラインに集まってエンジンが載り、マフラーと外装品が付いて組み上がっていきます。
ただ、完成車が組み上がって終わりではないんです。製造検査のあと、道路交通法や保安基準に基づいた検査を行い、基準を満たしていることを確認して初めて世に出せる。たった1台のバイクが、本当に数え切れないほど多くの工程と人の手を経て生まれてくるんです。
――開発の現場でとくに嬉しかった経験、やりがいを感じた瞬間を教えてください。
中村(ホンダ):自分が取りまとめた車両がホームページに載っているのを見た時ですね。つくり上げた商品がお客さんに乗ってもらえて、最近だとSNSでも実際にお客さんが乗っている姿を見ることができる。それに変わる喜びはなかなかないですね。
そしてもう1つ、多くの人たちと一緒につくり上げるということ自体がやりがいになっています。設計、生産、営業、認証など、国籍も性別も文化も関係なく、みんなで「いいバイクをつくるんだ」という思いを1つにしてつくり上げていく。まるで映画のエンドロールのような携わる人の多さで、エンジンをかける度にエンドロールが流れてほしいぐらいですよ(笑)。
1人じゃ絶対につくれない。だからこそ、みんなでつくり上げる喜びは格別なんです。

<開発設計責任者による深い話に高校生も耳を傾ける>
津谷(ヤマハ):たまたま立ち寄った道の駅で自分が担当したバイクに乗っている人がいたりするんです。全然知らない人なんですけど、嬉しくて思わず話しかけてしまいますね。
また技術屋として、いろいろ失敗して悩み続けた問題がある日ふっと解ける瞬間があります。まるで「難しい方程式が2年かかってようやく解けた」みたいな感覚で、アドレナリンがドーっと出る。次にすぐ違う問題が出てくるんですが(笑)。難しいことに取り組んでそれを解決できたときの達成感は、ものづくりならではだと思いますね。
溝口(スズキ):何ヵ月もかけて耐久テストを繰り返して、設計担当者1人ひとりが苦労しながらつくり上げた部品が1つになって、初めてエンジンに火が入って走った時。その瞬間の感情はやりがい以外の何者でもないですね。まだ工場から出ただけなんですが、「この子がそのまま世の中に出て誰かが楽しく乗ってくれるんだな」と思うと、本当に嬉しい。
ユーザーイベントに行くと、たくさんのオーナーの方が集まってきてくれる。自分たちがつくったものをこんなに愛してくれているんだなというのが、また次へのモチベーションになっています。

<熱心に講座を聴く高校生>
――将来バイクの開発者を目指す高校生に向けて、求められるスキルや必要な資格を教えてください。
津谷(ヤマハ):開発に向いているのは、まず「ものをつくることが好きな人」、そして「チャレンジすることが好きな人」ですね。ものづくりは無限の可能性を秘めているので、今までにないものを自分で生み出していくんだという、チャレンジすることが好きな人は向いていると思います。
また1人では絶対につくれないので、人と協力して1つのものを成し遂げていける人。これらすべてに当てはまらなくても、どれか1つでも当てはまるものがあればものづくりの開発に向いている人なんじゃないかな。
中村(ホンダ):資格については、特に必須というものはありません。高卒、専門学校卒、大学院卒、中途採用と本当に様々な方がいて、入ったら基本みんな対等です。そこからどうやって自分が勉強して育っていくかが大切だと思いますね。ただ、バイクをつくって世に送り出した時に自分で乗れないのは寂しいので、2輪免許は早めに取っておくといいかもしれません。
それから英語は勉強しておいた方がいいです。開発はグローバルで行うものですから、英語でのコミュニケーション能力は本当に大事です。そして何より「自分の得意なこと・やりたいことをどんどん伸ばす」。開発ではみんなの得意なことを合わせて1つのものをつくるので、自分の得意分野が必ず誰かの役に立つ日が来ます。
溝口(スズキ):高校生の時は鉄やアルミ、樹脂などの材料の基礎、熱処理、表面処理といった基礎的な知識を大切にしてください。自分みたいに学生の時にそういう勉強もしないで業界に飛び込んでくると「勉強しときゃよかったな」って教科書を引っ張り出したりすることがあります(笑)。
基礎的な知識でも、知っておくというのはいいんじゃないかなと思いますね。

<立ち見のお客様も多くメモを取る方も>
講座終了後には前回好評だったメーカー採用担当者による企業説明会「高校生キャリア企画」を実施しました
生徒たちは、高卒人材に求める資質や能力、在学中に学んでおくべきことなど、メーカーの採用担当者に積極的に質問を投げかけていました。それに対して採用担当者からも、希望する人物像や将来を見据えた具体的なアドバイスが伝えられ、活発な意見交換が行われました。

<本田技研工業(株)>

<スズキ(株)>
会場には高校生だけでなく多くの来場者が集まり、開発者たちの言葉に真剣に耳を傾けていました。1台のバイクが世に出るまでの裏側にある苦労や想い、そして次世代への力強いメッセージは、きっと皆さんの心を動かしたのではないでしょうか。
ここで感じた刺激や学びが、未来への一歩を後押ししてくれることを願っています。

<講座後の登壇者集合写真>
※登壇者のプロフィールはページ最下部をご確認ください。

登壇者プロフィール
本田技研工業(株)
二輪・パワープロダクツ事業本部
二輪・パワープロダクツ開発生産統括部
完成車開発部 開発統括課 ラージプロジェクトリーダー
中村 拓郎 氏
ヤマハ発動機(株)
MC車輛開発統括部 SV開発部
カテゴリートップレイアウターSP プロジェクトリーダー
津谷 晃司 氏
スズキ(株)
二輪事業本部
二輪パワートレイン設計部 部長
溝口 直輝 氏
【MC】 荒戸 完
ZIP-FMナビゲーター
チョッパーから家庭菜園まで幅広い趣味から得たものを、ラジオを通じて発信しています。
ものづくり講座を通じて、バイク業界の仕事、魅力を分かりやすく伝える。