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こちらの内容は第4回名古屋モーターサイクルショー「2025年4月4日(金)〜6日(日)」開催時のものです。
報道関係者の方へ
フォトアーカイブ(第4回の様子)の写真は各種報道への素材としてお使いいただけます。
※「高校生ものづくり講座 開催報告」内の写真は除く
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高校生ものづくり講座 開催報告
開催日:2025年4月5日(土)10:30~12:00
会場:展示ホールF内 特設ステージ
登壇者:田中 幹二 氏/ 丸尾 卓也 氏/横山 誠二 氏/渡部 寛之 氏
MC:荒戸 完(ZIP-FMナビゲーター)
第4回名古屋モーターサイクルショーで開催された高校生ものづくり講座。
国内4メーカーの開発者に各社の設計思想、バイクの楽しさ、開発の醍醐味、苦労、裏話を聞いてみました。
<各登壇者のプロフィール紹介の後、高校生ものづくり講座が開始された>
――今回のテーマは「最新の2輪EVと開発者」です。EVの取り組みについてお聞かせください
田中(ホンダ):ホンダはナンバーワン二輪車メーカーとしてEVでもナンバーワンを目指しています。今、EV開発で掲げているコンセプトは「風になる」です。EVは静かで、フィーリング的に物足りないなど、なにかとネガティブに捉えがちですが、そういったところを逆にポジティブに捉えて、静かだからこそ、エンジン車では聞こえなかったものが聞こえたり、感じられたり、新たな発見があるのも事実です。そこで静かさを徹底的に追求。静かさを狙ったEVを開発しています。
スタイリングもこだわっています。固定式バッテリーの採用などによって、よりスリムで、より扱いやすい車体パッケージが可能になるので、ガソリン車とは全く異なるエモーショナルな体験を提供できると考えています。皆さんが一番に気にしているであろう充電については、四輪と同じ規格の急速充電器に対応するなど、使いやすさも踏まえて、開発を進めています。
丸尾(ヤマハ):まず見ていただきたいのが実証実験用電動スクーター「E01(イーゼロワン)」です。EVの魅力や価値を多くの人に知ってもらうことで将来の普及に繋げていきたいとの意思を込め、開発コンセプトをPlugged YAMAHA to New Eraとしました。EVの特徴といえば、クリーン、低振動・低騒音、低中速の高トルクが挙げられますが、これらを「毎日の通勤通学でCO2削減」「疲れにくく、早朝深夜でも気を遣わない」「渋滞路、市街地での乗りやすさ」というEVの魅力に置き換えることが重要だと考えています。
それらを実現するには、世界的に支持されている125cc相当のスクータータイプが最適だと判断し、最高時速100キロ、航続距離100キロを目標に掲げて開発を進めています。このクラスに採用するモーターにはコンパクトさと高回転での使用が求められるため、IPMSM(空冷永久磁石埋込型同期モーター)を新開発しました。
<開発時の苦労話などを織り混ぜながら講座は進みます>
横山(スズキ):スズキは2030年までにEV比率25%を目指しています。その取り組みの一環として2025年1月にインドで発表したのがe-アクセス。スズキ二輪におけるEV世界戦略車第一弾です。EVスクーターといっても実際の利用シーンはガソリン車とほとんど同じで、大体約7割ぐらいの方が1日の走行距離40キロ未満、最高速度も60キロ以上は出してないっていうのが市場調査で分かりました。
e-アクセスはそういった実際の利用シーンを想定しています。スズキならではといえるのが、とにかくリーズナブルに、つまりとてもシビアなコスト制約のなかで、工夫に工夫を重ねて作り込んでいることです。たとえば信頼性の高いベルト駆動ユニットにはオートテンショナーを採用し、メンテナンスの手間を軽減しています。
渡部(カワサキ):ここに集まった高校生の皆さん、カワサキに対してどんなイメージをお持ちでしょうか? 男のカワサキだったり、大型バイクだったり、そんなイメージが強いと思いますが、カワサキのブランドスローガン「Let The Good Times Roll(レット・ザ・グッド・タイムス・ロール)」には、カーボンニュートラルを全力でやっていきますよという思いも込めています。そしてエンジンもやる、モーターもやる、いわゆるマルチパスウェイで取り組んでいます。
電動化は大きく分けてEV、ハイブリッド、水素エンジンの3つあります。今日注目したいのはハイブリッドです。エンジンとモーターを組み合わせ、それぞれの長所を併せ持つのが特徴で、クルマでは当たり前ですけど、サイズと重さの制約があるバイクは希少な存在です。ブーストボタンというのを設けていて、そのボタンを押した時だけ、パワーがさらに出る仕組みになっています。
<開発設計責任者による深い話に高校生も耳を傾ける>
――今日集まった高校生のなかには、将来バイクの開発者を目指す人も多いと思います。開発者に求められるスキルや、仕事のやりがいについてお聞かせください
田中(ホンダ):開発者にとって一番大切なのは“ブレない信念”を持つことだと思っています。バイクの開発は、技術やコスト、法規、タイミングなど、さまざまな制約に直面します。ときには、どうしてもやりたかった機能を削らざるを得なかったり、思い描いたスタイルを変更せざるを得なかったり、理想と現実のギャップに悩むことも少なくありません。そうしたなかで、最初に「自分はこういうバイクを作りたい」と強く思ったその気持ちを、最後まで貫けるかどうか。ここが、開発者としての軸になります。
ただ、信念だけで良いバイクができるかといえば、決してそうではありません。開発はチームで行うものです。設計、デザイン、試作、調達、生産、営業など、社内外の多くの人と協力しながら、ひとつの製品を作り上げていきます。そのために重要になるのが、“自分の想いを人に伝える力”です。
これは、言葉で説明することもあれば、図や数字、プロトタイプを使って伝えることもあります。相手にとって分かりやすい表現で、「自分はこういうものを作りたい」「こういう価値を届けたい」というビジョンを共有する。それができると、周囲の人も「よし、それなら一緒にやろう」と前向きになれるんです。
丸尾(ヤマハ):私は「やる気」と「熱意」が一番大事だと思います。バイクが好きで、ものづくりにワクワクできる人。そういう人は、壁にぶつかっても乗り越える力があります。そして、チームで一緒に目標を目指せる人。やる気さえあれば、成長のチャンスはいくらでもあると思っています。
私たちが今取り組んでいるEVバイクの開発でもそうです。新しい技術に挑むっていうのは、誰も答えを持っていないからこそ、熱意とやりがいがすごく大きいんです。「こうしたら面白くなるんじゃないか」「この仕様にすればもっと使いやすくなるんじゃないか」って、みんなで議論を重ねていく過程自体がすごく楽しい。
だから、バイクが大好きで、仲間と一緒に“まだこの世にないモノ”を形にしたいっていう人にとっては、開発の現場って本当に刺激的な場所だと思います。やる気と情熱を持って飛び込んできてほしいですね。
<熱心に講座を聴く高校生>
横山(スズキ):やっぱり“バイクが大好き”という気持ちが原点ですね。例えば、私たちの鈴鹿8耐プロジェクトでは、社内公募で集まった素人に近いメンバーが、短期間で準備して完走を果たしました。理由はただ一つ、みんなバイクが好きだったからです。
開発の現場も同じで、困難な課題に直面しても、好きだから頑張れる。それに、NHKの「魔改造の夜」に出たときもそうでした。みんな楽しみながら本気で開発していて、見ていてワクワクするんですよ。そういう“楽しみながら熱中できる人”が、最高の開発者になると思います。
渡部(カワサキ):私は元々バイク希望で入社したわけじゃなくて、ガスタービンをやりたくて川崎重工に入りました。でも配属されたのはバイク部門。結果的に24年間、バイクの仕事に携わってきました。面接で「バイクの免許持ってます」って言ったのが運命だったのかもしれません(笑)。
でも今振り返ってみて、バイクに関わって本当に良かったと思っています。だから伝えたいのは、「道はひとつじゃない」ということ。やりたいことが見つからなくても、いろんな道を通じて“なりたい自分”に近づける。それも開発者の道だと思います。
講座終了後には「高校生キャリア企画」としてメーカー採用担当者による企業説明会を実施(初開催)
生徒たちは、高卒人材に求める資質や能力、在学中に学んでおくべきことなど、メーカーの採用担当者に積極的に質問を投げかけていました。それに対して採用担当者からも、希望する人物像や将来を見据えた具体的なアドバイスが伝えられ、活発な意見交換が行われました。
<本田技研工業(株)>
<スズキ(株)>
参加校:小牧工科高等学校 / 名古屋市立工業高等学校 / 三谷水産高等学校 / 豊田工科高等学校
生徒だけでなく多くの来場者や出展者が集まり賑わいを見せた高校生ものづくり講座。
トップエンジニアのリアルな声に触れ、会場は大いに盛り上がりました。
開発の裏側にある苦労や想い、そして未来への熱いメッセージは、きっと皆さんの心に残るものだったのではないでしょうか。
今日の出会いや学びが、これからの進路や夢につながっていくことを、心から願っています。
<講座後の登壇者集合写真>
※登壇者のプロフィールはページ最下部をご確認ください。
登壇者プロフィール
本田技研工業(株)
二輪・PP電動事業統括部 電動開発部 チーフエンジニア
EV Fun 開発責任者
田中 幹二 氏


ヤマハ発動機(株)
モーターサイクル車両開発本部
MC車両開発統括部 CV開発部 EV設計2G
E01 プロジェクトリーダー
丸尾 卓也 氏


スズキ(株)
二輪営業・商品部 第5カーライン
チーフエンジニア
横山 誠二 氏


カワサキモータース(株)
MCディビジョン 第1設計部 部長
渡部 寛之 氏


【MC】 荒戸 完


ZIP-FMナビゲーター
チョッパーから家庭菜園まで幅広い趣味から得たものを、ラジオを通じて発信しています。
ものづくり講座を通じて、バイク業界の仕事、魅力を分かりやすくお伝えしていきます。ご期待ください!