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第4回名古屋モーターサイクルショー は、2025年4月4日(金)〜6日(日)の3日間、
Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて開催決定!
報道関係者の方へ
フォトアーカイブ(第3回の様子)の写真は各種報道への素材としてお使いいただけます。
※「高校生向けものづくり講座 開催報告」内の写真は除く
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高校生向けものづくり講座 開催報告
開催日:2024年4月6日(土)10:30~12:00
会場:展示ホールF内 特設ステージ
登壇者:古谷 昌志 氏/ 中島 彰利 氏/二宮 至成 氏/ 渡部 寛之 氏
MC:荒戸 完(ZIP-FMナビゲーター)
第3回名古屋モーターサイクルショーで開催された高校生向けものづくり講座。
国内4メーカーの開発者に各社の設計思想、バイクの楽しさ、開発の醍醐味、苦労、裏話を聞いてみました。
<各登壇者のプロフィール紹介の後、高校生向けものづくり講座が開始された>
――各社の環境戦略や取り組みをお聞かせください
古屋(ホンダ):まず国や地域でエネルギー事情やニーズが異なるので、環境問題には全方位で対応していく、いわゆるマルチパスウェイで進めていくことが大切だと私たちは考えています。ホンダは、具体的な目標年や行動を定めたTriple Action to ZERO(トリプル・アクション・トゥ・ゼロ)というコンセプトを掲げています。
トリプルとはカーボンニュートラル、クリーンエネルギー、リソースサーキュレーションの3つを指します。具体的な目標を挙げると、2030年までに二輪のCO2排出量を2019年度比で34%削減します。また電動車を30機種投入する計画です。環境対策を含めた社会的責任を果たしながら、楽しさや新しい価値を提供していく考えです。
中島(ヤマハ):ヤマハ発動機は環境計画2050というものを策定し、そのなかで大きく3つ、気候変動、資源循環、生物多様性と分けて対応を進めています。まず気候変動について。全世界全産業のCO2排出量のうち当社の製品が排出源として占める割合は全体の0.08%で、極めて環境負荷が少ない製品群となっています。
そもそも二輪の排出量は極めて少ないのですが、これをヤマハらしい方法でさらなる低減を目指しています。具体的には電動化であったり、燃料のカーボンフリー化であったり、小型モビリティの活用であったり、いろいろあって、マルチパスウェイで進めています。
生物多様性に関連する取り組みで分かりやすい例は、テストコースの造成工事です。立木を伐採したら、その代わりになるようテストコースの近くに保護区を設けています。樹木を移植するだけなく、その後もちゃんと生育しているかを定期的にモニタリングしています。
二宮(スズキ):スズキは2006年より環境に配慮した燃料電池二輪車の開発に取り組んでいて、2017年にナンバーを取得して公道走行を始めました。ベース車はバーグマンというスクーターです。
バーグマンで培った燃料電池技術を活用し、湖西工場では太陽光発電などの再エネ発電電力で水素を製造し、その水素をエネルギー源として荷役運搬車を走らせる実証実験も2022年から進めています。私は、このプロジェクトリーダーとして自らが燃料電池二輪車に乗ってテストをしていました。
主要市場のひとつであるインドでは、牛糞からバイオガス燃料をつくる実験を進めています。インドには3億頭もの牛がいるんです。10頭分の牛糞がクルマ1台1日分の燃料になるので、実用化に至ればかなり有効な環境対策になります。燃料と同時に有機肥料もつくれるのが特徴で、その肥料は農家さんの方に使っていただければ、循環型社会の一助になると考えています。
渡部(カワサキ):カワサキはLet The Good Times Roll(レット・ザ・グッド・タイム・ロール)というブランドスローガンを掲げています。そのスローガンには、歓びや幸せを世界のみんなに巡らせましょう、という私たちの想いが込められています。また、地球環境の未来に貢献していくこと、カーボンニュートラルについても、環境についても全力でやっていきますというメッセージでもあります。
ホンダさん、スズキさん、ヤマハさんの説明にもあったようにマルチパスウェイで取り組んでいることはカワサキも同じです。具体的にいうとまずEV。今年1月に発売しました。ただ充電インフラなどに課題があります。そこでストロングハイブリッドです。二輪としては世界で初めて、6月15日に発売します。そして水素バイク。こちらは試作車ができたばかりで、まだ研究段階にありますが、環境と楽しさの両立という点でも期待できます。
<開発設計責任者による深い話に関係者も耳を傾ける>
――二輪開発の難しさ、あるいは苦労話をお聞かせください。
古屋(ホンダ):開発で一番難しいと思うのは、コンセプトや想いを数値化することです。開発には多くのスタッフがかかわるのですが、コンセプトや想いって漠然としていて抽象的なので、それを数値化して開発陣全員で共有することが求められます。料理に例えると、おいしさって人によって微妙に違っていたりしますよね。100人いたら100通りのおいしさがあると思うんです。二輪もそうで、まずどんなふうに楽しいのかなどを多くの項目で数値化しないと、開発に携わるすべての人たちが同じ方向に向かって取り組むことができません。
中島(ヤマハ):私が全身全霊で開発に取り組んだ一台にVMAX(ブイマックス)があります。初代は1985年に発売され、2008年にモデルチェンジしたんですけど、その2代目を開発する際、比較対象になるモデルがないので苦労しました。たとえば目標を立てるにしても何に対してなのかを自分自身で決めなければなりません、ある意味、比べるのは自分自身なんです。怒涛の加速感というキーワードがあったんですけど、なかなか自分が思っているようにはいかなくて、むしろ開発を進めるに連れてマイルドになっていくんです。
でも期限は迫るばかりで、じゃあ、どうするんだという話になって、もう排気量あげようってことになったんです。で、最終的には1700ccに。会場の皆さん、何言っているか分からないかもしれませんが、業界的には「ありえねー」っていう話なんですよね。いやぁ、苦労しました。
二宮(スズキ):リーマンショックがあった2008年まで私はずっと大型バイクの開発をしていました。大型に関しては自信があったのですが、リーマンショックを機に小型バイクのプロジェクトリーダーになり、それで参考にしたのがビートというホンダさんのスクーターです。インドネシアなど東南アジアで席巻していて、 そのビートに燃費で勝つのが目標。今までの考え方すべてをイチから変える作業をして、ビートを何台も分解して、徹底的に研究しました。
結果として目標は達成できたのですが、大型と小型とでは開発の難しさがまったく異なることを改めて実感しました。特に小型の開発はコストがとてもシビアなので、一筋縄にいかないことが多くて、大変でしたけど、今振り返ると一番の思い出になっています。
渡部(カワサキ):開発に携わるエンジニアって、長くやっていると、決められたルールのなかでやらなければという、自分のなかで壁みたいなものをつくってしまいがちなんです。そういう壁を取り払うことも私たち開発責任者の役割だと思っています。
具体的な例を挙げると、ニンジャ ZX-14Rです。開発が始まった当初は排気量1352ccで進めていました。さきほどヤマハの中島さんの話にも出てきましたけど、開発途中で排気量を変更するのって、まさに英断です。でも壁を取り払うことで、開発メンバーの発想力をさらにいかすことができます。やはり開発メンバーって、発想が無限大というか、すごい発想力を持っています。それを最大限に引き出すことが二輪のさらなる進化につながっていくのだと思います。
<熱心に講座を聴く高校生>
生徒だけでなく、多くの来場者や出展者が集まり賑わいを見せた高校生向けものづくり講座。
トップエンジニアが語る自社のカーボンニュートラル社会実現に向けた取り組み、二輪開発の難しさや苦労。ここでしか聞けない貴重な話に、会場は大いに盛り上がりました。
登壇者から溢れる二輪愛、熱いメッセージは、次世代の二輪業界を担う若者の胸を震わせたことでしょう。
※登壇者のプロフィールはページ最下部をご確認ください。
登壇者プロフィール
本田技研工業(株)
ものづくり企画開発部
エグゼクティブチーフエンジニア
古谷 昌志 氏
ヤマハ発動機(株)
パワートレインユニットパワートレイン先行企画開発統括部
統括部長
中島 彰利 氏
スズキ(株)
二輪パワートレイン技術部
主査
二宮 至成 氏
カワサキモータース(株)
MCディビジョン第一設計部 部長
渡部 寛之 氏
【MC】 荒戸 完
ZIP-FMナビゲーター
チョッパーから家庭菜園まで幅広い趣味から得たものを、ラジオを通じて発信している。
ものづくり講座を通じて、バイク業界の仕事、魅力を分かりやすくお伝えしていきます。ご期待ください!